ギリシャ旅行記 「世界の中心デルフィ」
2011年11月20日(日) 記 : 鈴木 朗

世界遺産が18(2011年11月現在)あるギリシャでは、貴重な歴史的建造物から美しいエーゲ海の島々まで、他国では味わえない遺跡と景観に出会うことができます。今回は、世界史の教科書にも出てくる「デルフィの神託」が行われた聖域デルフィ(古典ギリシア語ではデルポイ)をご紹介します。アテネのアクロポリスより更に壮大だった建築遺産を通して、遠い昔に想いを馳せてみましょう。

紀元前800年頃と言えば、日本では弥生文化が始まった頃です。古代ギリシャの時代、デルフィは「世界のへそ(中心)」と言われていました。 中央ギリシャのパルナッソス山麓にある小さな村デルフィ(地図の中央にある印)はアテネから約160km。高速道路を利用すると2時間30分ほどで訪れることができます。

Google Map (旅行で使用したギリシャの地図)

デルフィ博物館

遺跡の隣にある博物館には、遺跡から発掘された黄金や象牙で作られた奉納品などが展示されています。フラッシュを使用しないという条件で撮影許可を頂きました。閉館時間が早いため、遺跡見学の前に訪れることをお勧めします。

古代美術の傑作「青銅の御者の像」(紀元前478年頃)は、この博物館の代表作品です。馬車レースで優勝した競技者の像で、紀元前478年、シチリア島から奉納された作品です。高さは約180cm。2500年前の作品とは信じられないくらい良い状態の作品で、大変多くの観光客が集まっていました。

クーロスの像(紀元前6世紀)。精巧な作品が多く、最盛時の荘厳さが伝わってきます。

アポロン神域からの発掘された黄金と象牙で作られたアポロン像の頭部です。 紀元前550年頃の作品ですが、その輝きは現在でも失われていません。

ナクソスのスフィンクス。紀元前6世紀頃、エーゲ海にあるナクソス島に住むナクソス人によって造られ奉納されたもので、女性の頭部、ライオンの肢体、鳥の翼を持つ怪物です。アポロン神殿を守護するナクソス島のシンボルでした。神託守護のシンボルでもあり、エディプス神話に登場する出会った人に謎賭けをする怪物です。

デルフィ遺跡

中央ギリシャの山麓とアポロン神殿遺跡

中央ギリシャの山麓とアポロン神殿遺跡

山の斜面を利用して建てられた遺跡を歩くと最初にアポロン神殿にたどり着きます。 この神殿は紀元前6世紀頃に建造されたと言われるもので、神託もこの神殿で行われました。 火災や地震の被害により、何度も再建され、現在では6本の柱が復元されています。

野外劇場遺跡

アポロン神殿を過ぎ、坂道を登ると野外劇場を見下ろすことができます。岩盤を削って造られたこの劇場は、ピュティーア大祭の演劇が行われていました。約5,000人の収容能力があったそうですから、大変な賑わいだったことでしょう。

野外劇場遺跡。眼下に見える細い道がデルフィを訪れる数少ない道です。

ギリシャ各地から多くの人々がこの聖地を訪れ同じ景色を眺めたのでしょう。雄大な自然の中に眠る遺跡を眺めていると不思議な感傷の気持ちになりました。歴史的遺産の宝庫ギリシャ。しかし、現在は政情不安で揺れています。この素晴らしい建築物を作り上げた末裔として経済を建て直し、世界中の旅行者が再び感動を求めて訪問できる環境にできると感じました。

以上