鋳物の現場技術(東京大学名誉教授 千々岩健児先生)の著作から金属の歴史につい て紹介します。金属の利用は自然界にある金属を発見し、始まりました。アルプスの水 晶探しの話と同じです。まず、金銀銅の貴金属を利用しました。むくの形で発掘できた からです。
紀元後、鉄鋼や銑鉄が世界の人々が広く使い始めました。それ以来20世紀まで、世界 は鉄の時代でもありました。そして今は21世紀、新しい各種材料が様々誕生しています 。使い方は無限です。創造性こそ必要ですが、そのために歴史を知ることが役立ちます 。
金属の製造技術を眺めましょう。金銀の装飾品が金属の最初の製品でした。王様や貴 族の専用物であり、宗教的な行事に多く使われていたのでしょう。その後、銅の武器や 農機具が誕生しました。これらは自然界に存在していた単体をそのまま製品に鍛造し、 利用していました。その後、銅が熱で溶けることが発見され、銅の鋳造技術はBC 4000 年頃と言われています。メソポタミア地方で誕生し、BC 3000年頃、銅と錫と鉛の混合 物である青銅が発明されました。青銅は融点の低い便利な材料として製法が確立し、世 界中に広まって行きました。
青銅技術はシルクロード地方を経て、中央アジアからインドへ、そして中国へと伝来 しました。中国の殷王朝時代には、精巧な青銅製品が作られました。色々な製品や彫刻 が存在しています。文字はこれらの製品に刻印され、今でも台北の故宮博物館にたくさ ん展示されています。その後、BC 1500年頃から400年頃にかけて西ヨーロッパに伝来 し、刀剣や容器や装飾品が作られました。実用的になってゆきました。日本にも中国の 鏡や葬祭器具が輸入され、奈良時代の東大寺大仏など、大きな仏像が全国に多数作られ ました。これらの仏像は飛鳥地方のお寺に色々所蔵されています。奈良の大仏様は世界 最新技術を駆使しました。青銅技術は誕生から3500年もかかり、完成域に達したわけで す。
鉄も同じように、メソポタミア地方で鍛造製品として誕生しました。BC 2800年頃、 アッシリアは鉄の剣で近隣諸国の軍隊を打ち破りました。この国は鉄のお陰で、地中海 地方の覇権を誇りました。鉄の技術は中国へも伝来し、BC800年頃に燐の化合物を混ぜ ると融点の低い銑鉄が発見されました。技術は地中海地方に逆輸入され、ギリシャ時代 にたくさんの巨像が作られました。その一部は今も存在しています。
それから暫く鉄の技術は停滞します。しかし、14世紀となり、世界は乱れ、戦いが世 界中で続きました。銑鉄製品は大砲と砲弾として一大進歩をします。まとめますと、銅 と鉄の技術が生まれたのはメソポタミアと中国でした。そして、数千年かけて世界中に 広がり、兵器を目的とし技術革新し、享受したのはヨーロッパ諸国でした。今、鉄の技 術は日本において完成域に近づいています。
鉄は比重7.9と重く、粘り強いのが特長です。戦艦や戦車や大砲の大鑑巨砲主義の時 代、技術が飛躍的に進化しました。戦後に自動車産業が急成長し、20世紀は鉄の時代と 言えるでしょう。そして今は21世紀です。今の日本を支えている自動車産業の材料は75 %近くが鉄で出来ています。日本メーカは優れた高張力鋼板を作れ、軽い車を作るのが 得意です。
鉄以上に軽い材料の近代史を概観します。第二次世界大戦が航空機技術を爆発的に進 化させ、アルミ合金圧延技術の進化がジェット機を普及させました。ジャンボジェット が安価な世界旅行やグローバルな物流経済を実現しました。鉄万能の時代は過ぎつつあ ります。車にとって重量低減は燃費効率アップにつながります。このため、車の材料技 術が革新している。しかし、大衆車はコストの点と、利用者の使い方もハードであり、 アルミボディーはまだ普及していませんが、間もなく大衆車に使われるかもしれません 。
エコの要求は車だけではありません。今は地球温暖化やエコロジーが重視される循環 型社会を目指しています。顧客は商品に軽さを求めます。業界によらず、軽くて丈夫な 金属材料を開発し、商品設計に生かすことが必要です。皆さん、軽い部品の設計法を学 びましょう。