人の目に入ったいろいろな情報を頭脳が情報処理をした結果、人は外界を見ています。頭脳は常に高度な情報処理をして、物体や図形や映像を作り上げているわけです。見 えていると思っている物体は存在している物と違うかも知れません。左右の目に映った情報を頭脳が処理した結果、人は初めて形を認識できるからです。子供は階段から落ちやすいのは、注意力不足のためではありません。理由は主に、段差の大きさを認識する回路がまだ出来上がっていないからです。
人の頭脳の高度な情報処理機能を簡単に知るため、まず人の目は楕円形の物体だと言うことを考えてみてください。正面にあるレンズを通して、楕円形の内側に存在する視細胞の上に投影されています。ぎっしりと並んでいる視細胞の映像幕に倒立図形ができているわけです。しかも、健常者なら右と左の目ですので、2つの少し違う像が人の脳に入力されているわけです。ここで注意して欲しいのは、電柱の映像も直線ではなく、曲がった柱として写っているはずと言うこと。人間の目はユークリッド空間を見ていないのに、人は3次元のユークリッド空間を見ているように錯覚しているとも言えるでしょう。
球体の大きさを人は自然に感じますが、大きさや距離の認識は極めてあやふやです。天中にあるお月様は小さいのに、地平線から上がったばかりのお月様は大きなお盆のように見えます。視細胞の上の映像は同じはずなのに、一方は小さく、一方は何故大きく見えるのでしょう。不思議ではありませんか。錯覚を起こす図形は昔から良く研究されてきました。錯覚を起こす条件は人によって違うこともありますが、子供も大人もほと んど同じように錯覚を起こす図形はたくさんあります。
立体感も不思議です。3次元立体映画や立体テレビが最近人気です。ゲーム機や携帯電話も立体表示機能が付いた商品があります。人の視覚は立体感を得る色々な機能を持っています。まず右目と左目による視差によって人は立体感を感じています。視差とは、目の位置が水平方向にずれて存在することです。平均的に8.5cm、左目と右目が見ている外界に角度差があり、この差が視差です。情景の奥行きを知覚するために、頭脳は視差に依存しています。片目に眼帯をかけると、距離感を失い、ボールは打てません。視差は立体視の重要な要素です。
両眼による視差以外にも、人が立体を認識する手段があります。例えば、輻輳、焦点距離、運動視差、図形の前後関係、明度の差などです。平面図形において立体感を感じさせる手法はたくさんあります。昔から絵画の手法として良く法則化されています。2次元でも巨匠の手にかかると、立体感溢れた絵画が出来あがります。立体的に見える画像処理手法は興味深いテーマです。ITCが追求したいテーマのひとつです。